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相続登記の義務化についての話【その2】

相続登記の義務化についての話の続きです。

相続登記をしたくてもすぐにできない場合があります。たとえば,相続人の数が多く,連絡がとれない人がいたり,協力的でない人がいたり,認知症等で判断能力が衰えている人がいたり,相続人間で揉めていて遺産分割協議が調わなかったり・・・
そのような場合,法律で定められた3年の期限以内に何とかしなければ罰則を受けてしまうことになりかねません。
どうしたらいいのでしょう・・・

その方法は2つあります。

まず1つ目は,法定相続分(法律で決められた相続人の権利の割合)で相続人全員の名義で登記をしてしまうという方法です。
この登記は,相続人一人からの申請でできてしまいます。
実は,この方法は,あまり知られていないかもしれませんが,現行法でも可能です。
一人からの申請でできるということは,他の相続人に断りなく,勝手に全員名義に登記をすることができるのです。
とりあえず法定相続分で全員の名義にしておけば,相続登記の義務は果たしたことになります。
そしてそのあとでゆっくりと協議をして,協議がまとまった時点で改めてその結果にしたがった登記をし直せばいいのです。
しかし,この登記には,実際問題として難点があります。
なので,当職としては個人的には,できればこの方法はお勧めしません。
その難点というのはいくつかあります。
まず,一人からの登記申請ということなので,いわゆる権利証(正式名称は「登記識別情報通知」というものです)が申請をした一人にしか発行されず,他の相続人全員は権利証がない状態になってしまいます。すると,次にその不動産を処分しようということになった場合など,登記の申請の際に全員の権利証がないため,余計な手続きが必要になり,手間も費用もかかります。
また,相続人の一人が家庭裁判所に相続放棄の手続きをしていた場合に,そのことを知らない他の相続人が相続放棄者も含めた相続人全員名義で法定相続の登記をしてしまうことなども考えられます。その場合,あとで,修正のための登記をしなければならず,手間がかかります。
この他には,たとえば相続人の間で協議が調わず,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を図ろうとした場合,通常は,調停において相続人間で相続分の譲渡をしたり相続分を放棄したりすると家裁から排除決定を受けて調停手続きから脱退することができるのですが,法定相続分による相続登記がされてしまうと,家庭裁判所ではこの排除決定をすることができなくなってしまいます。すると,自分の分は放棄してとっとと手続きから離脱したいと思った人がいても抜けることができなくなり,全員が調停成立までずっと手続きにつき合わされるハメになったりします。
ということで,法定相続の登記をしてしまうことの難点をあげれば,枚挙に暇がないのです。

そこで,2つ目の方法です。
それは,今回の法改正で新たに導入される制度で,「相続人である旨の申し出をする」という方法です。
(改正法が施行されてからできる登記です。)

最終的な相続登記は改めて行うことにして,とりあえず登記簿上の所有者が死亡したことと,申告した相続人の情報を登記しておくというのが概略です。
相続人から不動産所在地の法務局に対して「相続人である旨の申出」をします。すると,法務局の方で「相続人である旨の申出等による登記(相続人申告登記)」を職権で行ってくれるのです。これをしておけば,3年以内の期限を守ったことになります。
遺産分割協議がすぐに整わなそうな場合など,とりあえずこの相続人申告登記をしておいて,それからゆっくり協議を成立させればいいのです。
そして,後日に遺産分割協議が成立した場合には,遺産分割協議の内容に合致する相続登記をあらためて申請しなければならないのですが,その場合も,遺産分割の日からやはり「3年以内」に行わなければならないことが義務づけられています。

相続登記が済んでいない方は,早めに手続きされることをお勧めします。
司法書士松田法務事務所では,相続に関するご相談を年中無休で承っておりますので,どうぞお気軽にご相談くださいませ。